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(2015年7月より不定期掲載)
日本と韓国の裏側で暗躍する秘密情報機関JBI…
そこに所属する、二人のダメ局員ヨタ話。
★コードネーム 《 サイゴウ 》 …仕事にうんざりの中堅。そろそろ、引退か?
☆コードネーム 《 サカモト 》 … まだ、ちょっとだけフレッシュな人だが、最近バテ気味

韓国映画の箱

(星取り評について)
(★★★★ … よくも悪くも価値ある作品)
(★★★ … とりあえずお薦め)
(★★ … 劇場で観てもまあ、いいか)
(★ … DVDレンタル他、TVで十分)
(+1/2★ … ちょっとオマケ)
(-★ … 論外)
(★?…採点不可能)

『足球王』(2013)★★★ [韓国映画]

原題
『족구왕』
(2013)
★★★
(韓国一般公開 2014年8月21日)

英語題名
『The King of Jokgu』

コリアン・シネマウィーク2015公開時題名
『チョック王』

日本語訳題名
『足球王』(※)
(※)本記事中では「足球」と表記します。

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(STORY)
ホン・マンソプ(=アン・ジェホン)は一見、お人好しの大ボケ青年だが、実は足球競技の名選手。

本気のシュートはボールが地面にめり込むほど凄まじく、軍隊のチームでは一目置かれるエースだった。
そんな彼は兵役を終え、大学に戻るが、そこで衝撃の事実を知る。

かつて存在した足球場は姿を消し、足球部は廃部状態、部室には変人のチャンホ(=カン・ボンソン)が独りいるだけで、大学総長(=キム・ワングン)に足球場を再建するつもりなど全く無かった。

それでもマンソプは、持ち前の前向きさで足球場再建運動を始めるが、何故かそんな彼の行動をよく思わない女子大生コウン(=リュ・ヘリン)と寮の先輩ヒョングク(=パク・ホサン)が、しきりに絡んでくる。

マンソプは学園クィーンのアンナ(=ファン・スンオン)に一目惚れし振られるが、あまりの彼の天然ぶりにアンナは逆に興味を持ち、二人は付き合うことに。

一方、恋人アンナを盗られ、アイデンティティ危機を感じた学園キングにして、元高校サッカーのスタープレーヤー、カンミン(=チョン・ウシク)は、マンソプに足球タイマンを申し込むが惨敗し、雪辱を晴らすべく、学内の海兵隊OBチームに加わる。

二人の対決は大学に足球ブームを沸き起こし、遂に足球場再建を賭けた学内トーナメントが開かれることになった。

マンソプのチームには応援団兼マネージャーとしてアンナが、選手として巨体のミレ(=ファン・ミヨン)が加わるが、彼らの前に奇妙奇天烈なチームが立ち塞がる。

トーナメントはマンソプチームと海兵隊チームの一騎打ちに雪崩れ込むが、負傷者が相次ぐマンソプチームは、遂に試合続行不可能の危機に。
だが、そこに助っ人として現れたのは意外な人物だった!…
サイゴウ
「この作品、純然たるノースター、低予算のインディーズなんだけど、一般公開前から評判が良くて、ちょっと期待して観に行ったんだけど、【半分は評判通り、半分はガッカリ】といった感じかな?まあ、それも想定内だったので腹は立たなかったし、この手のインディーズとしては秀作と言っても間違いじゃないとは思うので、機会があったら観ても損はしないとは思うよ」

サカモト
「【韓国定石のコメディ】というよりも、独特のリズムと間で描かれた【おとぼけ系】ですから、どちらかと言えば日本映画風ですし、日本でも評価されそうなスタイルかもしれません。昔の周防正行作品に近いものも感じました」

サイゴウ
「オレは『シコふんじゃった』を思い出しながら観ていた。描かれる競技に違いはあるけれど、物語の状況が似ていたし、笑わせるツボもそう」

サカモト
「主演のアン・ジェフンは本作出演に際し、日本のコメディ映画を事前に何本か観ていて、そこに『シコふんじゃった(韓国公開時題名『으랏차차 스모부』)』も含まれていたと言っていましたけど、演じる上でいくらか影響はあったのかもしれません。演出的にはどうだったのか知りませんが…」

サイゴウ
「そういう意味では【コアな映画ファン向けのコメディ】と言えるかもな。ブロックバスターでこういうスタイルのコメディをやっちゃうと、韓国では意外と集客力がなかったりする。イ・ヘジュン監督の『彼とわたしの漂流日記(김씨 표류기)』や『ヨコヅナ・マドンナ(천하장사 마돈나)』がそうだったし、オミョル監督もどちらかと言えば【それ系】だよな。目の肥えた観客にはウケるけど、そうじゃない観客にはイマイチという点でも、インディーズらしい作品だったと言える。でも、予算の無さからか、無駄な間延びがあって、中盤はかなり退屈だったし、肝心の決勝戦は全く盛り上がらずで、カタルシスを期待すると、ちょっと肩透かしかも。でも、その代わりに、大学生活の描写が抜群に面白いんだよね」

サカモト
「カタルシスの無さや期待に対する肩透かし感は、もしかすると演出上の計算だったのかもしれませんけどね。ウ・ムンギ監督の作品を観るのは今回が初めてでしたけど、へそ曲がりなスタイルを目指す匂いが、この『足蹴王』からは濃く漂っています。なにせ、弘益大系のクリエイターですからね」

サイゴウ
「監督が【弘益大出身】って聞くと、へそ曲がりで、他とは違うスタイルなのが納得できちゃったりする」

サカモト
「まず、一番最初に肩透かしだったのがその題名でしょう。てっきりサッカーネタかと思いきや、【足球】ですからね。【スポーツ蹴鞠】ってやつですか」

サイゴウ
「この【足球】って、調べて見ると決してマイナー競技でもなくて、結構いろんな国で行われていたりするんだよな」

サカモト
「でも、韓国で凄くメジャーかと言えばそういう訳でもないと思いますよ。まわりでやっている人を観たことがありません」

サイゴウ
「確かにメジャーな競技だったら、知らない間に大学から部と競技場が無くなったりはしないだろうからな。映画はマンソプが軍で足球に励んでいるところから始まるけど、軍隊生活では、結構メジャーなんじゃないかな?だから、韓国男子にはオレたちが考える以上に親しみのあるスポーツなのかもしれない」

サカモト
「そういえば昔、DMZの米軍基地で兵隊が足球やっているのを見かけた記憶がありますね」

サイゴウ
「オレは山寺で坊さんたちがやっているのを見かけたけど、シャバじゃ見かけないよな」

サカモト
「でも、こんなにゆるゆるでだらだらの学園ドラマだったとは全く予想出来なかったです。てっきり、コミカルなスポーツ物かと思っていましたよ」

サイゴウ
「【熱血スポーツ物】というよりも、大学に集う変人奇人群像だな。そこがこの映画で一番面白いところなんだけど、【熱血!足球バトル!】だけでは映画が保たない、という判断もあったんじゃないかな?それに【足球】を全面に持ってきたのは、端から【外し演出】狙いだったような気がする」

サカモト
「退役した復学生を主人公にしているのに、牧歌的で朗らかな青春を描いているのも【外し演出】なんでしょうけど、それがこの『足球王』一番の試みだったのかもしれません」

サイゴウ
「普通、復学生と言えば、悲劇と孤独の象徴だったりする。つまり、可愛い彼女は他の男の元へ去ってしまい、大学内では友達無しの浦島太郎状態。そして、即就活しないと将来は激ヤバ、みたいな暗い話になりそうなんだけど、映画では全然そうならない」

サカモト
「何事にも屈託ない主人公に対して、大学キングで高校サッカーのスター選手だったカンミンの方がコンプレックスを抱えていてウジウジしているキャラだったりします」

サイゴウ
「他にも後ろ向きの根暗キャラがぞろぞろ出て来るけど、映画自体はなぜか前向きで明るい。そして、変な爽やかさがあって、妙に健全だったりする。【変なヒト大会】でも、それほど漫画的にカリカチュアされてはおらず、【こういう奴、いるよな】的レベルに抑えているところがいい」

サカモト
「全体に漂う緩い雰囲気も妙にリアルですし…劇中の学生は具体的に何を勉強しているのか、よく分からないのに【大学時代って、確かにこうだったよな】みたいな空気感も秀逸だったと思います。大学総長と学生達が直接議論を繰り広げるところは、実に韓国らしくて面白いですし…」

サイゴウ
「学生が大学側に要求していることはくだらない事なんだけど、信念に従って堂々と、どうでもいい要求をしている姿が笑わせてくれる。案の定、日本人留学生ネタが出て来たのは、ちょっとイヤだったけどな」

サカモト
「それもまた、【時代のスケッチ】なんでしょうね」

サイゴウ
「海兵隊出身者が軍隊式のサークルを作って、夜な夜な学内をパトロールしているのも韓国らしくて笑えた。あそこら辺は日本で分かりにくいネタなんだけど、韓国男子と付き合いがあれば理解できると思うよ」

サカモト
「韓国社会における兵役の影響を何気で濃く描いた部分、とも言えますね」

サイゴウ
「日本人一般にはとっつきにくい要素かもしれないけど、今までの韓国映画では、ありそうでなかったネタかもしれないな」

サカモト
「出演者は無名の若手ばかりなんですけど、みんなキャラが立っていて魅力的ですよね。特にマンソプ役のアン・ジェホンは全然格好良く無いし、かといって、それほど器用な笑わせキャラでもないんですけど、とても好感が持てました。マンソプのキャラは劇中における神様のような存在だったのかもしれませんね」

サイゴウ
「ヒロインに該当するアンナ演じるファン・スンオンが、この手の映画に出て来る配役としては本当に可愛かったのも珍しいよな。インディーズ系ではギャラの関係か、微妙なルックスの女優が多いんだけど…」

サカモト
「でも、この映画には実質ヒロインがいなかったのでは?」

サイゴウ
「オレは最初、可愛いいんだか、ブサイクなんだかよく分からないリュ・ヘリン演じるコウンがヒロインかな?と思って観ていたんだけど、結局はただの脇役だったりするしな」

サカモト
「前歯矯正中で、夏でも変なダウンジャケットを着ていて、性格もえらく屈折している強烈なキャラでしたからね。だから彼女が足球部マネージャーになるかと思いきや、全然そうなりませんでしたし…」

サイゴウ
「逆にアンナの方は登場時、単なる端役にしか見えなかった」

サカモト
「女優たちの肩透かしな扱いもまた、【外し演出】なのかもしれませんね。その他にも、スター選手だったカンミンがマンソプたちの敵役に廻ってしまったり、ちょい役ヒョンググが重要な役で再登場したりするところも、うまく【外し】ています」

サイゴウ
「ギラギラに角が立っているように見えたチャンホとミレの二人が、しょぼい一発ネタ的なキャラに過ぎないもそうだな。とにかく【外し技】の連続」

サカモト
「観ている時気付かなかったのですけど、今思えば、この『足球王』は稀有なセンスの怪作だったのかもしれません」

サイゴウ
「全編笑えるかどうかは保証は出来ないけど、巧妙な映画だったと思うよ」

サカモト
「ウ・ムンギ監督は近いうちにブロックバスター系を撮ることになるのではないかと思うのですけど、その時はどんな作品を手掛けるのか、全く予想できないですね」

サイゴウ
「【外されちゃう】のが映画の投資者だったら笑えるよな」

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