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(2015年7月より不定期掲載)
日本と韓国の裏側で暗躍する秘密情報機関JBI…
そこに所属する、二人のダメ局員ヨタ話。
★コードネーム 《 サイゴウ 》 …仕事にうんざりの中堅。そろそろ、引退か?
☆コードネーム 《 サカモト 》 … まだ、ちょっとだけフレッシュな人だが、最近バテ気味

韓国映画の箱

(星取り評について)
(★★★★ … よくも悪くも価値ある作品)
(★★★ … とりあえずお薦め)
(★★ … 劇場で観てもまあ、いいか)
(★ … DVDレンタル他、TVで十分)
(+1/2★ … ちょっとオマケ)
(-★ … 論外)
(★?…採点不可能)

『明日(あした)へ』(2014)★★ [韓国映画]

『카트』
(2014)
★★
(韓国一般公開 2014年11月13日)

英語題名
『Cart』

日本語訳題名
『カート』

日本公開時題名
『明日(あした)へ』
(日本一般公開 2015年11月6日)

ka-to.jpg

(STORY)

郊外に鎮座する大型スーパー、「ザ・マート」。
そこは韓国の流通業を代表する最大手の支店だ。
連日、大勢の客が出入りすると共に、店内では女性を中心とする従業員たちが顧客第一、売上第一をスローガンに、日夜、過酷な勤務についている。

彼らのほとんどが身分保障のない非正規労働者だったが、勤務成績が上層部に認められれば正規雇用される可能性もあった。

寡黙なレジ係のソニ(=オム・ジョンア)も、それを見据えて仕事に励む一人だ。
彼女は女手一つで息子のテヨン(=テオ/ト・ギョンス)と娘ミニョン(=カン・スアン)を育てている。

学生のテヨンは母親に修学旅行費用を負担させることに悩み、密かにコンビニでアルバイトを始める。
同級生のスギョン(=チウ)は、そんな彼を応援するのだった。

ソニの親しい同僚のヘミ(=ムン・ジョンヒ)もシングルマザー、一人息子のミンス(=ファン・ジェウォン)を育てながら暮らしていたが、不器用な彼女は勤務中、些細な事で上顧客の中年女性(=キム・ヨンエ)と衝突し、その息子(=キム・デフン)に土下座させられていた。

一方、二十代のミジン(=チョン・ウヒ)はソニらとは対照的に、仕事は仕事、自分は自分と完全に割り切っていて、勤務が終われば我関せずの姿勢を貫いている。

現場の上司であるトンジュン代理(=キム・ガンウ)は、ソニたちの立場に同情的だったが、チェ課長(=イ・スンジュン)は社内での立場を守る事でいつも頭が一杯だ。

ある日、その知らせは突然もたらされる。
通路に非正規雇用者の大量解雇通知が、何の予告もなく貼り出されたのだ。

動揺したソニたちは早速、トンジュン代理に協力を求め、経営側に抗議申し立てをするが、理路整然と自分たちの正当性を主張する上層部に取り付く島もない。

強硬手段しか方法が無いと悟った彼女らは、店舗の営業中にレジを強制シャットアウト、店内に籠城して抗議するという暴挙に出る。

だが、従業員たちの間に悲壮感は無く、時を経るにつれて連帯感が生まれてゆく。

その行動は世間の注目を集め、一種の祭りとして、華々しくソニたちの勝利に終わるかに見えたが、やがて国家と企業の暴力装置が動き始める…

2007年、ソウルにある「ホームエバー・ワールドカップモール店」で起こった実際の事件を元に描く、先進国・韓国の断層。
サカモト
「今回、この映画を観て一番ビックリしたのは、そこそこ大作だったことです。絵に描いたような社会問題を正面から取り上げているので、地味な内容かと思いきや、大きなロケセットを使っていましたし、エキストラも大勢出て来る。壊し物も派手。ですから、正直ちょっと違和感もあった作品です」

サイゴウ
「実際起こったストライキ籠城事件をベースにしているので、製作者側としてはかなり気合を入れていたんじゃないかと思う。今の日本映画ではこういう娯楽大作はまず考えられないし、実に韓国映画らしいテーマだったとは思うんだけど、【金持ちVS貧乏人】、【搾取する側VS搾取される側】の激しい戦いを露骨に描いた、かなり左寄りの内容。だけど、商品としては純然たるブロックバスターだったりするところに、大きな矛盾を感じたな。それが最後まで足を引っ張っちゃった気がする。まあまあ面白いんだけど、痒いところに手が届いていないんだよな」

サカモト
「この映画に投資する側は、人の悪い表現をすれば、韓国社会の【搾取する側】ですからね。そのお金で【搾取される側】の悲劇を描いている訳ですから、ちょっと率直に喜べないところがあります」

サイゴウ
「低予算インディーズで作った方が社会派としてテーマがもっと強烈に浮かび上がったんじゃないのかな?登場人物もエピソードも、もっと絞って、主人公ソニとその周辺をじっくり描いた方が良かったと思う。プ・ジヨン監督なら、そういうスタイルの方がいい結果を出したと思うし…大作にしちゃった分だけ、無駄に登場人物の多い群像劇になってしまい、焦点がえらくボケている」

サカモト
「【どうせブロックバスターなんだから】という割り切りも、もっと欲しかったと思います。あくまでも籠城する側にこだわり、各人が問題を抱えて苦しんでいる姿を丁寧に掬おうとしているところが、プ・ジヨン監督らしい部分だとは思うんですけど、これだけ【為政者VSか弱い市民】の構図にこだわるのなら、ベタベタなメロドラマに偽装してしまった方が本来の狙いが観客に伝わったんじゃないでしょうか?」

サイゴウ
「一応、雇用する側にも色んな立場の人がいることは描いているんだけど、やっぱり、それも半端なんだよね。男性社員であるトンジュンや、チェ課長なんか、もっと膨らませることができた惜しいキャラだったと思う。プ・ジヨン監督は【男の描き方がヘタ】といってしまえばそれまでなんだけど、例えばソニとトンジュンを不倫の関係にしていたら、分かりやすいラブストーリーになりそうな気がしたんだけどな」

サカモト
「労働争議で二人の仲が引き裂かれてしまうという展開ですか。【ロミオとジュリエット】のように…」

サイゴウ
「そういう方が大衆の好みそうなメロドラマの体裁が取れたと思うし、会社側とストライキ側両者の微妙な立場が描けたんじゃないかなぁ…光州事件を大々的に扱った大作『華麗なる休暇』を観た時、あまりの割り切りぶりに腹が立った記憶があるけれど、今思えば、あのやり方は正しかったのかもしれない」

サカモト
「『明日(あした)へ』でも、登場人物については、多彩なキャラ群になるよう、かなり注意を払っていたとは思いますよ。だけど、どう考えても一番つまらないキャラであるソニの家庭事情をだらだらと描いてばかりなので、他の人物がちゃんと活かせているとは言えず、もったいなかったですね。息子テヨンのエピソードなんか、蛇足そのものにしか思えませんし…彼のガールフレンド、スギョン演じるチウが良かった分、更に無駄感がありました」

サイゴウ
「パート軍団の中では若いミジンが【もったいないキャラ】の最たるモンだな。彼女は他のオバサンたちとは別の行動原理で動いているところのある現代っ子そのもので、かなり良かったんだけど」

サカモト
「演じたチョン・ウヒ自身も良かったですし…」

サイゴウ
「でも、チョン・ウヒって、なんだかよく分からない女優だな。他の作品と別人みたいなのは俳優としていい事だと思うけど、立ち位置がはっきりしない」

サカモト
「意外とカメレオン系なのかもしれませんね」

サイゴウ
「主役のソヒ演じたヨム・ジョンアは、驚くくらい容貌が変わっていて【ええっ!?どうしたの?】と思っちゃった。あれも演出の内とは思いたいけど、ほんとに生彩無くて【ぎょっ】としたよ。やっぱりヨム・ジョンアには角の立った暴れキャラをやって欲しかった。ああいう優柔不断で主体性のない役は全然しっくりこないので納得が行かない」

サカモト
「キャストは全体的に手堅く、演技の上手な人を揃えているとは思いますよ。でも、やっぱり微妙な違和感が拭えないですよね。それが実質主演不在の原因にもなっていて、結局は【おばさんたちがレジ裏で暴れてワーワー騒いでいるだけ】みたいになってしまったきらいがあります」

サイゴウ
「やっぱり、こういう政治色の濃いテーマで、インディーズ系のマインドを保ちつつ、大衆に受けるブロックバスター作るって、大きな矛盾なワケでもあるから、作る側としてかなり無理があったんじゃないかなぁ…出だしの移動撮影なんて、大作ならではのダイナミズムがあって、【プ・ジヨン監督やるじゃん!】なんて観ていたんだけど、それも最初だけでしりつぼみになっちゃう」

サカモト
「恐らくですけど、作品がブロックバスター故、作り手としての葛藤と抵抗がプ・ジヨン監督側には相当あったのではないかと想像しているんですけどね」

サイゴウ
「これは映画の良し悪しとは全く別の話ではあるんだが、韓国の一部のお偉いさんやお金持ちの方々にとっては、かなり都合が悪い内容でもあったんじゃないかな?【一体、いつの時代の話だよ】みたいな誤解を招きかねない部分もあって、対外的に【韓国の先進性】をアピールしたい人は眉をしかめそうだ。たかが女性パートの抗議行動に対して、機動隊やらヤクザが介入して暴力的に排除しちゃう様子を描いているワケだからね」

サカモト
「【女性パートの抗議行動】といっても、かなり過激ですからね。ですけど、一昔前の日本でも同じようなことをやったならば、似たような結果になっていたんじゃないでしょうか?だから、国家の暴力装置介入についてはそれほど変だとは思いません。でも、韓国におけるかつての【労働争議】の枠が【生活の保証】ではなく、一層過激な【命の保証】を求める運動へと変わりつつあるのではないでしょうか?李明博政権辺りから…それを象徴しているような映画だったとは思いますけどね」

サイゴウ
「昔に比べれば遥かに先進的で豊かになった韓国ではあるけれど、その反面、時代を逆行させて封建的な体制を復活させようとする動きもまた、実は密かに出てきているんじゃないだろうか?そういうことも感じさせる映画だったな」

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