(2015年7月より不定期掲載)
「一応ドキュメンタリーの形式をとっているけど、ちょっと微妙な構成の作品だ」
サカモト
「韓国で有名な巫女の一人であるキム・グムファの人生と今現在を描いていますが、再現ドラマの部分がかなり多いのでフィクションとノンフィクションの折衷みたいな内容です」
サイゴウ
「【ドキュメンタリーとは何か?】という定義にもよるんだけど、日本におけるそれとはイメージが異なる作品かもな。原一男の『全身小説家』だとか、日本のTVで放送している再現系実録物に近い」
サカモト
「それゆえ、【どこまで事実なのか】みたいな疑問を感じる人もいるでしょうけど、ドラマ仕立てにした分、非常に分かりやすく面白くもなっています」
サイゴウ
「でも結構シュールな演出でもある」
サカモト
「監督を手がけたパク・チャンギョンはパク・チャヌクの弟にあたる人ですが、そのシュールさに互いちょっと通じるところがあるかもしれませんね」
サイゴウ
「いやあ、マーケット的にはいい宣伝ネタだろうけど、やっぱりそういうこととは切り離して観るべきだと思うよ」
サカモト
「再現ドラマではムン・ソリが主演ですし、美術や撮影もかなり丁寧なので、それなりに製作費が掛かっていたのでは?と思うので、パク・チャヌクの力が【無きにしもあらず】なのではないかと」
サイゴウ
「ブロックバスター的な商業作品に近いのは確かなので、インディーズというより、準メジャー作といったところだろう。扱っているネタはマイナーだけどな」
サカモト
「ちょっと異色だったのは、【実現象としてのムーダン】を描いていたことですか」
サイゴウ
「キム・グムファが幼い頃から特異な能力を持ち、【萬神】として後を継ぐまでのドラマは中々具体的。巫女が見える世界はどういうものかが描かれているので、ディカバリーチャンネル枠内みたいで興味を引かれた」
サカモト
「ムーダンをテーマにしたドキュメンタリーは今までも幾つかありましたけど、巫女が内に抱えた超常的なものを具体的に描く作品はあんまりなかったと思います。あくまでもその人の生活を追うとか、韓国の伝統文化の紹介みたいな面の方が強くて、超常現象としての側面はスルーされる傾向がありましたね」
サイゴウ
「まあ、オカルティックなテーマだから、【現象】として真面目に捉えることはまだまだ、韓国内で抵抗があるんじゃないだろうか?でも、過去に韓国のTV番組でキム・グムファの能力についてそれなりに科学的に描こうとしている作品があったのは驚いたよ」
サカモト
「劇中流されるクリップ映像ですね」
サイゴウ
「もう一つ、非常に興味を惹かれたのが、日帝時代から朝鮮戦争、軍事政権、ベトナム戦争、そして現在に至るまでの韓国現代史と、朝鮮におけるムーダンの関係を歴史的な流れの中で描いていたことだ。キム・グムファが黄海州の貧しい村落の出だったのも映画が面白くなった理由だと思う」
サカモト
「日帝時代は活動が当局に黙認されていて、大韓民国になった途端、行政から圧力を加えられるようになったのはちょっと意外ですね。まあ、キム・グムファが故郷の村から逃げ出す経緯については日本人からすると【またこれかよ!?ふざけんな!】みたいで、異論&反論もありますけど」
サイゴウ
「元々北の人だから、当時の韓国でスパイ容疑を掛けられるのは、やもをえないことではあるんだけど、それより愕然としたのが儀式の最中に呆けたキリスト教信者が乱入して彼女を【サタン!】と罵り、邪魔をするシーンだ。韓国が今だにクリエイティブの面でイマイチである理由がそこに見えた気がした」
サカモト
「オカルテックなことについての社会的許容性って、みんな気がついていないだけで本当は重要なことなのかもしれません」
サイゴウ
「伝統儀式や古い宗教なんて、乱暴にいえば、みんな不条理なものだ。だけど、それをバカにしてセセ笑ったり、【正統】という看板で片付けちゃったりすることは、自分たちの文化や歴史を否定することにもなりかねない」
サカモト
「いくら非理論的で現代にそぐわなくても、オカルト文化はもともとなんらかの必然性があって生まれたものであり、長らく生活の一部でもあった訳ですからね」
サイゴウ
「今回の『萬神』はそこら辺、韓国のドキュメンタリーとしては、ちょっとだけ踏み込むことが出来たかもね」
サカモト
「キム・グムファ自身と、その弟子たる人たちも、みんな聡明なのも印象的でしたね。外国人もいますし…」
サイゴウ
「今風の言い方をすれば、彼女たちは基本的に心理カウンセラーだろう。結構儲けている気配が画面から伝わってくるけど、彼女たちの話し方や表情を見ていると、それも当然、みたいな理知的さが漂ってくる」
サカモト
「みんな、身なりが小奇麗で端正なのも韓国らしいですし」
サイゴウ
「韓国はオバさんもオバアさんも、都会だろうが田舎だろうが、身なりに気を使っているよな。年配で教養がある人ほど、その傾向は強い気がする。それがカッコいいとか美しいとか言う訳ではないんだけど、朝鮮文化の美徳だと思うよ」
サカモト
「なぜ韓国で日本人女性なのか分かるのかといえば、実は身なりの端正さの違いだったりしますからね。オバさんになるとその差が歴然としてきます」
サイゴウ
「まあ、日本人の一見だらしないように見えるオシャレ文化も、それはそれで【あり】なんだけどな。ただ、韓国では身なりの大切さみたいなものを痛感することはよくある。そういう点もなんだか目に付いた映画だったと思うよ」
日本と韓国の裏側で暗躍する秘密情報機関JBI…
そこに所属する、二人のダメ局員ヨタ話。
★コードネーム 《 サイゴウ 》 …仕事にうんざりの中堅。そろそろ、引退か?
☆コードネーム 《 サカモト 》 … まだ、ちょっとだけフレッシュな人だが、最近バテ気味
韓国映画の箱
(星取り評について)
(★★★★ … よくも悪くも価値ある作品)
(★★★ … とりあえずお薦め)
(★★ … 劇場で観てもまあ、いいか)
(★ … DVDレンタル他、TVで十分)
(+1/2★ … ちょっとオマケ)
(-★ … 論外)
(★?…採点不可能)
『萬神』(2013)★★ [韓国映画]
原題
『만신』
(2013)
★★
(韓国一般公開 2014年3月6日)
英語題名
『MANSHIN: Ten Thousand Spirits』
日本語訳題名
『萬神』(※)
(※)京畿道・揚州における巫女の敬称
(STORY)サイゴウ
韓国では現役最高の巫女(=萬神/만신)の一人、キム・グムファ。
彼女は日帝時代、現在の北朝鮮・黄州にある貧しい家で生まれ、幼い時から不思議な能力を発揮し、周囲に疎まれていたが、ある日、地元の巫女に、その力を認められ、ムーダン(巫堂)の巫女として人生を歩むことになる。
やがて彼女は日帝による慰安婦徴用から逃れるために南側に移るが、ほどなく半島は内戦で南北に分断されてしまう。
故郷に戻ることが出来なくなり、韓国で“萬神”として活動を続ける彼女(再現ドラマはキム・セロンとムン・ソリが演じる)だったが、それは奇しくも激動の韓国現代史そのものでもあった…
「一応ドキュメンタリーの形式をとっているけど、ちょっと微妙な構成の作品だ」
サカモト
「韓国で有名な巫女の一人であるキム・グムファの人生と今現在を描いていますが、再現ドラマの部分がかなり多いのでフィクションとノンフィクションの折衷みたいな内容です」
サイゴウ
「【ドキュメンタリーとは何か?】という定義にもよるんだけど、日本におけるそれとはイメージが異なる作品かもな。原一男の『全身小説家』だとか、日本のTVで放送している再現系実録物に近い」
サカモト
「それゆえ、【どこまで事実なのか】みたいな疑問を感じる人もいるでしょうけど、ドラマ仕立てにした分、非常に分かりやすく面白くもなっています」
サイゴウ
「でも結構シュールな演出でもある」
サカモト
「監督を手がけたパク・チャンギョンはパク・チャヌクの弟にあたる人ですが、そのシュールさに互いちょっと通じるところがあるかもしれませんね」
サイゴウ
「いやあ、マーケット的にはいい宣伝ネタだろうけど、やっぱりそういうこととは切り離して観るべきだと思うよ」
サカモト
「再現ドラマではムン・ソリが主演ですし、美術や撮影もかなり丁寧なので、それなりに製作費が掛かっていたのでは?と思うので、パク・チャヌクの力が【無きにしもあらず】なのではないかと」
サイゴウ
「ブロックバスター的な商業作品に近いのは確かなので、インディーズというより、準メジャー作といったところだろう。扱っているネタはマイナーだけどな」
サカモト
「ちょっと異色だったのは、【実現象としてのムーダン】を描いていたことですか」
サイゴウ
「キム・グムファが幼い頃から特異な能力を持ち、【萬神】として後を継ぐまでのドラマは中々具体的。巫女が見える世界はどういうものかが描かれているので、ディカバリーチャンネル枠内みたいで興味を引かれた」
サカモト
「ムーダンをテーマにしたドキュメンタリーは今までも幾つかありましたけど、巫女が内に抱えた超常的なものを具体的に描く作品はあんまりなかったと思います。あくまでもその人の生活を追うとか、韓国の伝統文化の紹介みたいな面の方が強くて、超常現象としての側面はスルーされる傾向がありましたね」
サイゴウ
「まあ、オカルティックなテーマだから、【現象】として真面目に捉えることはまだまだ、韓国内で抵抗があるんじゃないだろうか?でも、過去に韓国のTV番組でキム・グムファの能力についてそれなりに科学的に描こうとしている作品があったのは驚いたよ」
サカモト
「劇中流されるクリップ映像ですね」
サイゴウ
「もう一つ、非常に興味を惹かれたのが、日帝時代から朝鮮戦争、軍事政権、ベトナム戦争、そして現在に至るまでの韓国現代史と、朝鮮におけるムーダンの関係を歴史的な流れの中で描いていたことだ。キム・グムファが黄海州の貧しい村落の出だったのも映画が面白くなった理由だと思う」
サカモト
「日帝時代は活動が当局に黙認されていて、大韓民国になった途端、行政から圧力を加えられるようになったのはちょっと意外ですね。まあ、キム・グムファが故郷の村から逃げ出す経緯については日本人からすると【またこれかよ!?ふざけんな!】みたいで、異論&反論もありますけど」
サイゴウ
「元々北の人だから、当時の韓国でスパイ容疑を掛けられるのは、やもをえないことではあるんだけど、それより愕然としたのが儀式の最中に呆けたキリスト教信者が乱入して彼女を【サタン!】と罵り、邪魔をするシーンだ。韓国が今だにクリエイティブの面でイマイチである理由がそこに見えた気がした」
サカモト
「オカルテックなことについての社会的許容性って、みんな気がついていないだけで本当は重要なことなのかもしれません」
サイゴウ
「伝統儀式や古い宗教なんて、乱暴にいえば、みんな不条理なものだ。だけど、それをバカにしてセセ笑ったり、【正統】という看板で片付けちゃったりすることは、自分たちの文化や歴史を否定することにもなりかねない」
サカモト
「いくら非理論的で現代にそぐわなくても、オカルト文化はもともとなんらかの必然性があって生まれたものであり、長らく生活の一部でもあった訳ですからね」
サイゴウ
「今回の『萬神』はそこら辺、韓国のドキュメンタリーとしては、ちょっとだけ踏み込むことが出来たかもね」
サカモト
「キム・グムファ自身と、その弟子たる人たちも、みんな聡明なのも印象的でしたね。外国人もいますし…」
サイゴウ
「今風の言い方をすれば、彼女たちは基本的に心理カウンセラーだろう。結構儲けている気配が画面から伝わってくるけど、彼女たちの話し方や表情を見ていると、それも当然、みたいな理知的さが漂ってくる」
サカモト
「みんな、身なりが小奇麗で端正なのも韓国らしいですし」
サイゴウ
「韓国はオバさんもオバアさんも、都会だろうが田舎だろうが、身なりに気を使っているよな。年配で教養がある人ほど、その傾向は強い気がする。それがカッコいいとか美しいとか言う訳ではないんだけど、朝鮮文化の美徳だと思うよ」
サカモト
「なぜ韓国で日本人女性なのか分かるのかといえば、実は身なりの端正さの違いだったりしますからね。オバさんになるとその差が歴然としてきます」
サイゴウ
「まあ、日本人の一見だらしないように見えるオシャレ文化も、それはそれで【あり】なんだけどな。ただ、韓国では身なりの大切さみたいなものを痛感することはよくある。そういう点もなんだか目に付いた映画だったと思うよ」
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