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(2015年7月より不定期掲載)
日本と韓国の裏側で暗躍する秘密情報機関JBI…
そこに所属する、二人のダメ局員ヨタ話。
★コードネーム 《 サイゴウ 》 …仕事にうんざりの中堅。そろそろ、引退か?
☆コードネーム 《 サカモト 》 … まだ、ちょっとだけフレッシュな人だが、最近バテ気味

韓国映画の箱

(星取り評について)
(★★★★ … よくも悪くも価値ある作品)
(★★★ … とりあえずお薦め)
(★★ … 劇場で観てもまあ、いいか)
(★ … DVDレンタル他、TVで十分)
(+1/2★ … ちょっとオマケ)
(-★ … 論外)
(★?…採点不可能)

『起爆』(2013)★★ [韓国映画]

原題
『들개』
(2013)
★★
(韓国一般公開 2014年4月3日)

英語題名
『Tinker Ticker』

日本語訳題名
『野良犬』

日本初公開時題名
『起爆』
(第26回東京国際映画祭 “アジアの未来”にて上映)

勝手に題名を付けてみました
『首輪なき飼犬たち』

turuge.jpg

(STORY)
理系の大学院生チョング(=ビョン・ヨハン)は卒業を間近に控えていたが、就職先は決まらず、焦燥の日々を送っていた。
所属する研究室はペク教授(=キム・ヘチャン)以下、不条理なヒエラルキーに支配されており、一番格下のチョングにとって安息の場ではない。

日頃の鬱憤を晴らすべく、チョングは時間があれば、とある趣味に興じていた。
廃屋に見せかけた山のアジトに夜な夜な通い、そこで多様な種類の手製爆弾を製作するのだ。

かつてチョングは折り合いの悪い父親の爆殺を試みて逮捕されたことがあったが、未成年だったことから大きな罪には問われず、今そのことを知るのはごく限られた関係者だけ、彼にとって爆弾作りと共に決して漏らしてはならない秘密でもあった。

チョングはインターネットを介して自分の爆弾を使いたい人々を探していたが、誰も相手にしない。
そんな折り、大学の後輩にあたるヒョミン(=パク・ジョンミン)が名乗り出る。 彼は裕福な家庭の子息だが、学校で不遜な政治的言動を繰り返す厄介者だった。

人懐こいヒョミンに自分にはない自由と力を感じたチョングは爆弾を彼に託すが、やがてヒュミンは愉快犯として世間を騒がせるようになる。

彼の行動がエスカレートすることに恐怖したチョングは、その暴走を止めようとするが、逆にヒョミンは煮え切らないチョングの言動に反感を露わにし始める。

同じ頃、爆弾騒ぎを担当するオ刑事(=オ・チャンギョン)らは過去の事件からチョングの存在を突き止めるが…

一見恵まれた環境の中で育ちながら、未来を見失った二人の青年による目的なきテロルを描く。
サイゴウ
「『파수꾼(Bleak Night)』の流れを汲んだ、韓国映画アカデミー系の真面目で退屈な低予算作品なんだけど、シナリオ自体には凄く可能性があったと思う。できれば早急にメジャー系としてリメイクを望みたいくらいだ」

サカモト
「屈折したお坊っちゃまの話なので【なに、お前ら贅沢こと言ってんだ!】みたいな部分が観客としてはどうしてもありますが、【富者の動機なきテロリズム】を描いたアイディアは、なかなか韓国映画として斬新です」

サイゴウ
「劇中、テロをやる側に決して動機が無いワケではないのだが、ありがちな政治的背景が無いことが特色なんだよな。まあ、格差問題だとか、若者にチャンスを与えない体制に対する不満の裏返しではあるんだけど、韓国社会が豊かになった分、生きる目的を失ってしまった若者たちの空虚感や絶望がよく出ている。しかも主演の二人が適役なので、それもうまく効いた」

サカモト
「この手の作品は底辺の貧困層を描くことが多いんですけど、今では貧困層の抱える不満が中間層まで及んできている、ってことかもしれません」

サイゴウ
「思想なきアナリストのヒョミンは明らかにお坊っちゃま、だから同情の余地はないんだけど、チョングの方は絵に描いたような中流家庭の真面目な青年。ゆえに傑出した部分もなく、就職に苦労する様子が今の日本と重なる」

サカモト
「その大人しくて常識的すぎるチョングの隠れた趣味、特技が爆弾を作ることだった、という矛盾が、この映画のポイントなのですけど、下手打てばどうしようもないキャラになりかねないところを、人物描写を丁寧にやることで回避しています。秘密基地で爆弾を作り続けるチョングの姿はネットにハマって引きこもっちゃう韓国青年たちの暗喩にも見えました」

サイゴウ
「チョング演じたビョン・ヨハンは演技的にまだまだなんだけど、タイトロールをうまく体現していたよな。俳優として未熟なところが逆に、チョングの持つ屈折した部分の表現としてうまく活きていた」

サカモト
「彼とは対象的なトリックスターであるヒョミン演じたパク・ジョンミンも、俳優本人のパーソナリティが映画のキャラクターとして活きていましたね。どこか計算した演技しているのが見え見えなのは残念なのですけど、今後、本能的に芝居をこなせるようになれれば、いい個性派俳優になりそうです。ちょっとあざとすぎますけど…」

サイゴウ
「彼は【『Bleak Night/파수꾼』のパク・ジョンミンがねぇ~】みたいな感じだったな。ただ、顔立ちが個性的すぎるし、神経質で落ち着きない【地】が演技に出てしまうので、そこら辺をうまくコントロールできないと今後、出来る役柄は限られてしまうかもな」

サカモト
「リュ・スンボムに続けるような個性派スターになれるかどうかは現時点では微妙ですか」

サイゴウ
「確かに今の映画界大スターに当てはめると、昔のリュ・スンボムっぽいかもな」

サカモト
「でも正直、ビョン・ヨハンもパク・ジョンミンも、この映画では役が嵌っていても、【俳優としてはまだまだ】という印象の方が強くて、シナリオや演出に救われた、って感じの方が強いです」

サイゴウ
「いくらでも爆弾サスペンスだとか青春犯罪物に出来そうなシナリオだったんだけど、監督のキム・ジョンフンはお利口なので意図的にそれを外したって気がする」

サカモト
「劇中、肝心の爆弾は意外と爆発しませんしね。そこら辺のこだわりというか、ヘソの曲げ方も映画アカデミー系作品らしいところではありますけど」

サイゴウ
「その【高尚さ】をやり過ぎちゃうと一般観客相手の映画としてマイナスになりかねないけどな。この『起爆』のような作品には、やっぱりサスペンスだとかキッチュさを求めてやって来る人たちも少なくないワケで、あざとい見せ場がもう少しあれば秀作くらいにはなったんじゃないかな?」

サカモト
「ちょっと気になったのは劇中での警察の対応ですよね。チョングが容疑者になった途端、実際の警察の動きはあんなものではないでしょう。大学側も彼の過去や容疑を知れば放っとくはずはないのですけど…」

サイゴウ
「そこら辺は話を進めるための方便だとは思うけど、人間描写が真摯な分、ご都合主義の気配がして残念ではあったな。だけど、話の途中で警察側を大きく絡めたら、この映画は成立しなくなってしまうだろう」

サカモト
「映画が虚像、フィクションであるがゆえの【痛し痒し】かもしれませんね」

サイゴウ
「新人のインディーズとしても一般の映画としても凄く真面目に作っているので決して悪い作品ではないんだけど、ちょっと常識的すぎることと、優れた映画に必要な【絶対的狂気】に大きく欠けるので、残念ながら注目すべきレベルまで行かなかった」

サカモト
「もうちょっと、どこかに【野蛮な血】を入れないと内輪受けの卒業制作的ノリを超えられないと思います」

サイゴウ
「韓国映画アカデミーって、ホント、優秀な人材が揃っているとは思うんだけどねぇ…」



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