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(2015年7月より不定期掲載)
日本と韓国の裏側で暗躍する秘密情報機関JBI…
そこに所属する、二人のダメ局員ヨタ話。
★コードネーム 《 サイゴウ 》 …仕事にうんざりの中堅。そろそろ、引退か?
☆コードネーム 《 サカモト 》 … まだ、ちょっとだけフレッシュな人だが、最近バテ気味

韓国映画の箱

(星取り評について)
(★★★★ … よくも悪くも価値ある作品)
(★★★ … とりあえずお薦め)
(★★ … 劇場で観てもまあ、いいか)
(★ … DVDレンタル他、TVで十分)
(+1/2★ … ちょっとオマケ)
(-★ … 論外)
(★?…採点不可能)

『弁護人』(2013)★★ [韓国映画]

原題
『변호인』
(2013)
★★
(韓国一般公開 2013年12月18日)

英語題名
『The Attorney』

日本語訳題名
『弁護人』

勝手に題名を付けてみました
『熱血ノ・ムヒョン伝説 -序章-』


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(STORY)
1970年代、軍事政権下の韓国・釜山。
高校卒業後、働きながら独学で法律を学び、弁護士になったチン・ウソク(=ソン・ガンホ)は、相棒のパク・ドンホ(=オ・ダルス)と共に小金持ち相手の財産管理を行う弁護士事務所を開設、営業を始める。

たちまち地元の売れっ子になるウソクだったが、そこに突然舞い込んできたのが、苦学時代に世話になった食堂の女主人チェ・スネ(=キム・ヨンエ)の一人息子ジヌ(=シワン)を弁護する依頼だった。

街の学習塾で講師をしていたジヌは、仲間と共にささやかな民主化運動を行っていたことから、軍部と結託した警察に逮捕、収監され、音信不通になっていたのである。

早速、地元の検察局に押しかけ、権利をまくしたててジヌと面会するウソクだったが、拷問で廃人同様になった彼に大きなショックを受ける。

それを機に、庶民派弁護士としての使命に目覚めたウソクは、逮捕劇の裏側で暗躍するクァク・ビョング刑事(=クァク・ドウォン)らの脅しと暴力にもめげず、ジヌの逮捕が捏造だった証拠をつかむ。

やがて裁判が始まるが、主席判事(=ソン・ヨンチャン)は最初から協力的ではなく、仲間の弁護士団も乗り気でないのは明らかだった。

法廷で熱弁をふるうウソクだったが、軍部と警察による新たな捏造と恫喝の前に、どんどん形勢不利に追い込まれてゆき、仲間の弁護団は身の危険を感じて裁判から降りてしまう。

孤立無援で独り法廷に残されたウソク。
絶望的な状況下で本当の闘いが始まる。

かつて熱血人権派弁護士として慕われ、今では現代韓国の英雄として若い層から崇め祀られている、故・盧武鉉元大統領をモデルに描く、実録風フィクション。
サカモト
「2013年暮れに公開された作品群の中でぶっちぎりの大ヒットだったのが、この『弁護人』です」

サイゴウ
「あっという間に500万人動員(※)しちゃったからね。ただ、ソン・ガンホとオ・ダルスが出ている時点でどういう映画か中身が見えちゃうから驚きはゼロ」
(※)最終統計結果は11.374,620人(KOFIC資料による)

サカモト
「それもまた、マーケティング側の狙い通りだったのではありませんか?」

サイゴウ
「今の韓国映画はソン・ガンホが出ている時点と分かった時点で何でも想定内になっちゃうよな。でも、それは観客としてオレ的には実にイヤなことだ。彼が韓国映画界を代表する演技派、個性派として巷で祭り上げられるようになってから随分経つんだけど、『弁護人』のような【ソン・ガンホのオレ様ショー!】を毎回観せられるたびに【有名じゃなかった時代の方が良かったよな】って、いつもつくづく思っちゃう。今じゃ何をやっても、観客が求める最大公約数をビジネスライクにこなしているだけにしか見えないことが多いし、生半可な監督より偉い立場だから、作り手側にもそうするよう取巻き連中なんかと一緒に要求しているんじゃないか?なんて、どうしても思っちゃったりする。後発組のキム・ユンソクのようなひどい手抜き感はあんまりないけど、観ていて全然楽しくない大スターの一人になってしまった」

サカモト
「でも、それは韓国の大衆が【定番】や【ワンパターン】を求めているからであって、その要求に忠実なだけかもしれませんよ。韓国には『寅さん』や『釣りバカ』みたいな【鉄板の定番シリーズ】はありませんが、その代わりにソン・ガンホみたいな【鉄板の立場】にいるスターの【オレ様ショー】が、その役割を担っているのではないでしょうか?」

サイゴウ
「そういう見方も出来るけどな」

サカモト
「それと、この映画が支持されたもう一つの理由は、故・盧武鉉大統領の人権派弁護人時代を、面白おかしく子供にも分かりやすく描いたことも大きかったと思います」

サイゴウ
「なにせ李明博政権以降、ますます祀り上げられているみたいだからな。この映画では一言も主人公を【盧武鉉】とは言っていないけど、『26年』の【あの人】があからさまに誰を指しているかハッキリしているのと同じ。だからオレとしては、そこら辺に韓国特有のイヤーな排他性を強く感じて共感出来なかったりする。原体験も違いすぎるし。観ていて【あー、やっぱり韓国だなぁ】って呆れはするけど…」

サカモト
「果たして主人公が盧武鉉かどうかは別にして、映画自体はオーソドックスな勧善懲悪物です。それについては韓国市場にターゲットを特化した商品として、その点、優れていたと思います。政治に興味が無い子供たちにも分かりやすい内容でしょうし。でも、その【子供にも分かりやすい】という切り口が、裏を返せばグレーゾーンにいる一般大衆の操作を狙った気配を感じさせる、ってことでもありますけどね…」

サイゴウ
「定番が好きな人にとっては面白い映画であることにオレも異論はないよ。でも同時に韓国独特のイヤーな雰囲気が漂う内容でもあったと思う。元ネタが当の韓国人でなければ理解し難いということも大きいけど、物語全てが【韓国的前提と韓国的常識】という、いつも外国人が困らされるお約束の下で進行する映画でもあったからだ。この映画をノーテンキに楽しむには【盧武鉉は庶民の味方、絶対的ヒーローだ!】【韓国の軍事政権はすべからず悪い!】【民主化運動をしている若者たちは皆善良で可哀想な被害者だ!】という事前・事後承諾を観る側は求められる。韓国式時代劇みたいな単純な娯楽作なら、それでも【仕方ない】で済むけど、この『弁護人』の場合は今だ完結していない歴史的・政治的テーマが濃く含まれているので、当時を知らない子どもや若者にこれを観せて、【どうだ、素晴らしいだろう、カッコイイだろう】と、暗黙に絶賛と追従を求めることはどうかと思う。本来なら当時を知る年長者が若い世代をフォローすべきなんだけど、韓国じゃ、まずそういうことはやらないだろうし、やっても黙殺されるだけだろうし…」

サカモト
「この映画に韓国の政治や歴史についての一方的な事前・事後承諾を強要されるかどうかは人ぞれぞれの問題ですけどね。でも、韓国は映画にしてもTVにしても、自国の歴史や政治をテーマにする時、端から頑とした【韓国式絶対前提】が大なり小なり存在して、客観的、自由主義的であろうとする人たちと作品自体がコミュニケーションを拒否している傾向が無いとはいえませんからね」

サイゴウ
「映画は映画に過ぎないから目くじら立てて怒っても仕方ないし、【韓国人は公的な歴史的、政治的異論に対して耳を傾けることに興味も関心もない国民性】と言い切ってしまえばそれまでだけど、軍事政権が終焉し、とりあえず民主化してから早二十年が経つワケだから、こういう映画にはもっと柔軟で自由かつ洗練された解釈も取り入れて欲しいんだけどね」

サカモト
「【当時なぜ軍事政権であったのか】とか【なぜ為政者は強権政治が維持できたのか】とか【悪の側にいる人々が何を思い、どう生きてきたのか(※)】なんて、韓国の作品ではまず描かれませんからね」
(※)2014年に公開された『情愛中毒(인간 중독)』はそれをやっちゃった珍しい例

サイゴウ
「やればやったで酷く叩かれるだけ、そしてお決まりの【ナチスがどうたら】とか【従軍慰安婦がどうたら】とか、毎回同じ語句を繰り返して騒ぎ始め、最後は【日本が悪い】【アメリカが悪い】と他国か他人のせいにして終わりだもんな。自国歴史批判で許される定番ネタといえば、せいぜい【朝鮮王朝の後期政治が悪い】とか【朴正煕の独裁政権が悪い】くらいじゃないのか?それだって【日本が諸悪の根源】という前提での話」

サカモト
「みんながみんな、そんな偏狭な人たちばかりではありませんし、本音では真剣に考えていない事の方が多いとは思うのですが、【ああ言えば、こう言わなければならない!】みたいな暗黙のルールが韓国にはありますからね。それに、いつもひどい目に遭う一般庶民ですから、【こうなったのは俺や私のせいじゃない】という言い方も理解すべきですが、だからといって国の問題が一般市民と無関係かといえば、それもおかしな話です。結局、彼らが口汚く罵る体制とは、自分自身の責任でもある訳ですから。それはどこの国や社会でも変わらないことなので、【韓国は例外だ】なんて馬鹿な話はないでしょう」

サイゴウ
「自分たちの社会が持つべき責任のあり方を、特定国家やその為政者へ責任転換したり、悪の根源として吊し上げたり、逆に自国内の英雄賞賛や崇拝に振ってしまうところは、いつまで経ってもオレたちが馴染めない韓国の特性。もっと総体的な繋がりで物事を考えるよう、大人は子供や若者たちに教えるべきなんだけど…」

サカモト
「でも、それでは誰にでも分かりやすい【勧善懲悪】で大衆が動かなくなりますから、煽る側の立場からすれば都合の悪い事でしょうし、分かり易かった話が複雑に難しくなることで、ますます本当のメッセージが届かなくなる人も増えるでしょうね。なにせ、余計なことに頭を使わなくてはなりませんから…」

サイゴウ
「今の韓国は【自称:日本より進んでいる直接大統領選挙制の国】なワケなんだから、日頃、文句をタレて吊るし上げて叩いている問題の多くは、当の国民自身にも大きな責任があることを、もっと論じ合う風潮にすべきなんじゃないのか。結局、この『弁護人』も【絶対悪の体制】に抵抗する【絶対正義の英雄】を、当時を全く知らない若者が中心になって絶賛して祀り上げる一方で、一度【悪】認定されたならば永久に【悪は悪でなければならない】という、韓国社会にありがちの困ったパターンを象徴するような映画でもあったと思うよ」

サカモト
「私は【日帝時代】や【軍事政権時代】を支持したり弁護するつもりはありませんけど、それらが親日派だとか、日本の伊藤博文やら天皇やら歴代の首相やら、特定個人の私利私欲に依るものとして一刀両断してしまう姿勢は、いい加減やめるべきです。歴史や政治が単純化できないことを、そして単純化してしまうことが非常に危険であることを、映画にきちんと織り込んで欲しかったとは思います」

サイゴウ
「一旦【こうだ!】と決めつけたらば、個々人の本音は違っていっても修正が許されなくなり、偏向したまま、どんどん進んじゃう韓国らしい個性を持った映画ではあるんだけど、それゆえ純粋に楽しむことに疑問を感じる作品だったな」

サカモト
「総評的には凡庸な映画だと思いますが、やっぱり【国民俳優ソン・ガンホ】人気と【かっこいい俺たちの盧武鉉】という二つのカルト・イメージの合致が、韓国で受けた一番理由のような気がします」

サイゴウ
「映画に現代史的な解析を当て嵌めながら観ていた観客は、あんまりいなかったんじゃないか?」

サカモト
「そういう人は一部インテリや専門家だけでしょうね。みんながみんな、そういう視点を持っていたら、この『弁護人』はここまでヒットしなかったでしょう。私がこの映画を観終わった後、前の席にいた大学生らしきカップルがスマートフォンで弁護士時代の盧武鉉が裁判で暴れている動画を観ていたんですけど、その姿をこの映画に重ねて観れば単なる【かっこいい】痛快作でしかなかったんだろうな、なんて思いましたよ」

サイゴウ
「まさに【韓国式ドメスティック】の王道だな。オレとして気になったもう一つの点は、あからさまにオリンピック前の韓国を舞台にしているのにもかかわらず、当時の雰囲気や空気感が映画から全く感じられなかったことだ。もちろん、色々と美術なんかでは工夫して時代性を再現しようとしているのは分かるんだけど…なぜなんだろう?」

サカモト
「そこら辺が映画マジックの難しさかもしれませんね。映画で物量的、美術的にいくら凝っても、努力の割には時代性が出なかったりしますから」

サイゴウ
「ちょっと前の作品だけど、クァク・キョンテクの『チャンピオン(챔피언)』は、そこら辺が良く出来ていて感心した記憶があるので、技術的に韓国映画界で出来ないワケではないんだろうけど…」

サカモト
「でも『チャンピオン』は既に十年以上前の映画です。だから、当時ぎりぎりで【昔の韓国】を再現可能出来た、という考え方もできます。日本人が考えるより今の韓国では『弁護人』当時を再現することが、実は難しくなっているのかもしれませんよ。近頃の日本における戦争映画が再現技術やツールの面で昔より優れていても、映像化したものに実感が伴わなくなって来ていることと、似たようなことなのかもしれません」

サイゴウ
「それとオレが思うほどソン・ガンホもオ・ダルスも昔の韓国の臭いを引きずる俳優じゃなかったのかもしれないし、もしかしたら韓国社会の不確定さ、不安定さが彼らの個性を変質させてしまったのかもしれない」

サカモト
「それにスターとして大金が入るようになれば人は変わりますからね。この『弁護人』という映画は、【過去への憧れ】が【羨望すべき伝説】として【絶対的事実】にすり替わり、【後世に語り継がれてしまう】、という過程を如実に示してしまった作品かもしれませんね」

サイゴウ
「そういうところも、今だ【悪の巣窟】認定されている日本側であるオレたちにとって、この『弁護人』を色々と危惧しちゃう理由だったかもしれないな」



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