SSブログ
(2015年7月より不定期掲載)
日本と韓国の裏側で暗躍する秘密情報機関JBI…
そこに所属する、二人のダメ局員ヨタ話。
★コードネーム 《 サイゴウ 》 …仕事にうんざりの中堅。そろそろ、引退か?
☆コードネーム 《 サカモト 》 … まだ、ちょっとだけフレッシュな人だが、最近バテ気味

韓国映画の箱

(星取り評について)
(★★★★ … よくも悪くも価値ある作品)
(★★★ … とりあえずお薦め)
(★★ … 劇場で観てもまあ、いいか)
(★ … DVDレンタル他、TVで十分)
(+1/2★ … ちょっとオマケ)
(-★ … 論外)
(★?…採点不可能)

『父のEメール』(2012)★★★+1/2★ [韓国映画]

原題
『아버지의 이메일』
★★★+1/2★
(2012)
(韓国一般公開 2014年4月24日)

英語題名
『My Father's Emails, 2012』

日本語訳題名
『父のEメール』

勝手に題名を付けてみました
『父の遺したEメール』

aboji2.jpg
(STORY)
父が死んだ。
晩年、アル中の引きこもりになった彼は、家を出て、家族と疎遠な生活を送っていた。

子供たちとの関係もだいぶ前から気まずくなっており、娘や息子もまた、自分たちの父が何を考え、どう生きてきたか、今となっては知るべくもない。

だが、映画監督を目指す次女ジェヒ(=監督ホン・ジェヒ本人)と家族の元に、父から43通のEメールが送られていた。
おそらく苦労して送信しただろう、父からのEメール。
それを開くと、そこには子供たちが知る由もなかった父の人生が記されていた。

父は今の北朝鮮、黄海州に生まれ、学生の時に朝鮮戦争が起こり、着の身着のまま、独りで韓国に逃れてきた。
やがて、韓国で職を得て結婚し家庭を築き、建設会社のスタッフとして戦時下のベトナムや、中近東に赴任して家族を養ってきた。
ソウル・オリンピックにはボランティア通訳として参加と、彼が通って来た人生は、まさに韓国が辿って来た道をなぞるかのようだった…

実際に残されたEメールを元にして描く、光復節後の知られざる韓国現代史。
サカモト
「あくまでも個人的なドキュメンタリーに思えたので、観る前は乗り気がしませんでしたし、睡魔と闘う二時間になるのかな、って臨んだのですけど、全くそういうことはありませんでしたね。むしろ歴史エンタティメントに仕上がっていて、観客として嬉しい誤算でした」

サイゴウ
「日本の『エンディング・ノート』を連想させる作品なんだけど、『エンディング・ノート』が【私的枠内】で進む内容だったことに比べ、『父のEメール』はいつの間にか、韓国現代史へ拡がってゆく。そこら辺は韓国らしい作品だったな」

サカモト
「演出的にも韓国のドキュメンタリーらしい部分がたくさんあって、素材を大胆にいじってしまう手法が、映画を分かりやすく面白くする上で効果を上げていたと思います。『エンディング・ノート』はそこら辺のアプローチが逆なので、日韓女性監督の現代ドキュメンタリーとして比較すると、面白いのではないでしょうか」

サイゴウ
「韓国の某映画祭では最後までグランプリ候補だったらしい。それがうなずける作品ではあったな」

サカモト
「日本でもきちんと上映できる完成度だとは思うんですけど、やっぱり問題になりそうなのが、あまりにもドメスティックな内容でしょう」

サイゴウ
「ある程度、韓国の現代史に興味が無いと、ちょっと辛いかもしれないな。でも、韓国の一般家庭が抱える問題を描いた、という点では、日本人にも観て欲しいと思う。まあ、あまりに個人的過ぎる部分もあるから、それに反発する映画好きや韓国嫌いも出て来るだろうけどな」

サカモト
「でも、今は韓国内でも、この作品で扱っているテーマって、みんな関心が無くなっていると思うのですよ。一般家庭で昔の話は、あんまり話題にならないみたいですし、ましてや赤の他人の赤裸な々打ち明け話なんて、みんな観たがらないでしょう」

サイゴウ
「歴史的なものに関心が薄くなり、話題に上らなくなるのは日本も同じだけど、それ以前に日本、韓国に共通することとして、歴史的事象を直接目撃した人たちって、そういうことをあまり話さないよな。日帝時代の経験者なんて、昔の思い出を日本人にしか話さなかったりする」

サカモト
「この作品のテーマでもある、監督本人の父親もまさにそうですよね。それもまた、家族関係がうまく行かなくなった原因の一つだとは思うんですけど、その一方で【父親とは概して自分の人生を語らない】ものなのかもしれません」

サイゴウ
「監督の父親と同じ経験をした人たちは、韓国で少なくないとは思う。でも、それを誰かに伝える機会がないまま、この世を去ってしまっているのなら、それはとても寂しいし、韓国の文化的な損失だろう。今回の映画はたまたま、父親当人がリテラシーの高い人だったので、偶然Eメールの形で個人史が残されたワケだけど、ホント、幸運だったよ」

サカモト
「朝鮮戦争時に着の身、着のまま、独り北側から逃げて来たことに始まって、ベトナム戦争と中近東には建設の仕事で、88年オリンピックでは通訳として、死ぬ間際には住民運動と、絵に描いたような韓国現代史を背負った人生なので、ちょっと不自然な気もしましたけどね」

サイゴウ
「当時、それなりにインテリで使える人は皆、似たような経験をしていたんじゃないのかな。それに当時の韓国はそれだけ社会が動いていたワケで、決して珍しい境遇ではなかったと思う。彼がお偉い人ではなくて、社会での立場も微妙なポジションだったから、そういう激動の背景になった、ということもあるだろうけどな」

サカモト
「今の韓国の若い世代と、この映画で描かれたお父さんの世代の平均的インテリジェンス(知的レベル)って、実はかなり違うと思うのですよ。【頭のいい悪い】という優劣の問題ではなくて、昔の韓国のインテリたちの方が、今の韓国の若者たちよりも、遥かに分別があったと思うのです。でも、もしそうだとすれば、それが世代間の軋轢の元にもなって、この映画のお父さんも、それが家族から遠ざかる結果になってしまったのかな、って気がしました」

サイゴウ
「長女が父親の知り合いのベトナム人と結婚してアメリカに移住している、っていうのも、モロに一昔前の韓国を引きずっているよな。劇中、アメリカにある長女の家で撮影した映像がかなり出て来るんだけど、韓国語で父娘の諍いが始まると、ベトナム人の旦那は【また始まった】みたいな諦め顔になって、完全に蚊帳の外になってしまうのが、ちょっとユーモラス。でも、これらのシーンには、外国の韓国人移民が潜在的に抱えている問題もなんとなく漂ってもいる」

サカモト
「監督のお父さんの老後は【アル中】に【引きこもり】、【家庭内暴力】というブラックな展開になってゆく訳ですけど、韓国社会でそれなりに成功していても、結局は孤独であり、誰も自分を分かってくれないという、故郷を追われた人特有の寂寥感を最後まで引きずり続けたのかもしれません」

サイゴウ
「そういえば、南北離散家族問題って、1990年代後半くらいから韓国内でも、めっきり話題に上らなくなったよな」

サカモト
「韓国で生まれ育った多くの人にとって、【離散家族問題】はあくまでも他人事、自分たちに関係ないアウトサイダーの問題だった、ってことなのかもしれません。そういう哀しみも、この作品の背景にはあったと思います」

サイゴウ
「豊かになった韓国社会というものに対して、最後までアウトサイダーであり続けなければいけなかった男の、悲しい人生行路って感じのドキュメンタリーだったのかな?」




nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。