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(2015年7月より不定期掲載)
日本と韓国の裏側で暗躍する秘密情報機関JBI…
そこに所属する、二人のダメ局員ヨタ話。
★コードネーム 《 サイゴウ 》 …仕事にうんざりの中堅。そろそろ、引退か?
☆コードネーム 《 サカモト 》 … まだ、ちょっとだけフレッシュな人だが、最近バテ気味

韓国映画の箱

(星取り評について)
(★★★★ … よくも悪くも価値ある作品)
(★★★ … とりあえずお薦め)
(★★ … 劇場で観てもまあ、いいか)
(★ … DVDレンタル他、TVで十分)
(+1/2★ … ちょっとオマケ)
(-★ … 論外)
(★?…採点不可能)

『The Servant 春香秘伝/房子伝』★★+1/2★ [韓国映画]

原題『방자전』★★+1/2★
(2009年/韓国一般公開日2010年6月2日)

邦訳題『房子伝』
(※)房子=個人名ではなく下男、下僕を意味する

日本初公開時題名
『The Servant 春香秘伝』

勝手に題名を付けてみました
『下僕の恋/窯変・春香伝』


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**********************************************
(あらすじ)
李氏朝鮮時代。
作家の某氏(=コン・ヒョンジン)は、ある人物から、物語を書き残すよう依頼を受ける。
待ち合わせの場所に現れたのは、哀しげな眼をした男(=キム・ジュヒョク)だった。
彼は、悲しい男女の物語を語り始めるのだった…

男はかつて、南原の両班子息・李夢龍(=リュ・スンボム)の房子(=専属の下僕)として、日蔭の人生を過ごしてきた。
甘やかされて育った夢龍は、頭脳は優れていたが我儘で非常識な青年であり、それを取り繕うのが房子の役目でもあった。
房子は教養があり武術の心得もある人物だったが、隷属的な身分制度の前では夢龍のいいなりになるしかない。
一緒に暮らすマ老人(=オ・ダルス)は人生の先輩として、愚痴をこぼす彼を諭すのだった。
ある宴会の席で、夢龍と房子は妓生の娘、春香(=チョ・ヨジョン)へ共に一目ぼれする。
夢龍と春香は付き合いを始めるが、自分の気持ちが抑えられない房子は反抗心も加わって、強引に春香と肉体関係を持ってしまう。
やがて夢龍は出世のため漢陽に出向き、科挙試験に主席合格するが、結局は田舎の一官僚に過ぎず、中央官庁から来た役人に屈辱的な扱いを受ける。
野心に燃えた夢龍は、南原に赴任してきた新しい府使を陥れるべく、春香を利用して陰謀を企て成功させるが、本当の悲劇はその後に待っていた…

男の視点から描く、もうひとつの『春香伝』。
**********************************************
サイゴウ
「キム・デウ監督のデビュー作『淫乱書生』はタイトルこそポルノチックだが、内容はぜんぜんそうじゃなかった。映画自体は、なかなか面白い異色の時代劇だったんだけど、その【エロくない】事実にガッカリ来ていた観客は結構いたんじゃないかな?」

サカモト
「シナリオライターとしては高く評価され、いわば若き大御所の風格さえ備えたキム・デウでも、さすがにデビュー作じゃ、売れている女優にキワドイ要求はできなかったんじゃないですか?映画業界にいるのも長いから色んなシガラミもあっただろうし。でも、この監督はエロスを描くように見えつつも、もっとその奥底にある【人間関係としての男女の性愛】を描くことの方がまず第一のテーマであって、【見た目のエロ】はあんまりやりたくないというか、必然性のないエロは避ける姿勢があったんじゃないかと…」

サイゴウ
「しかーし…今回の映画では【がらりと大変貌】って感じだ。描くべきテーマは一貫しているけど性愛描写をシツコイくらい舐め回すように撮っている。むろん春香演じたチョ・ヨジョンとその他キャストによる熱演とスタッフによる理解の賜物でもあるんだけど、おっぱいを愛撫するシーンにこだわっているみたいで、それがちょっと可笑しかった。キム・デウ監督って、おっぱいフェチなのかな?」

サカモト
「その真相がどこにあるかは脇に置いておいて、基本的には全然エロくなかったと思いますよ。『スキャンダル』や『淫乱書生』でも同じだったんですけど、心の寂しさの方がこみ上げて来ます。それはなんというか、男も女も一肌恋しくて激しく求めあうけど、本当に欲しいものが得られず、結局は理解し合えないみたいな感覚ですか。性愛を好んで描いているように見えても、あくまで方便であって、テーマは別のところにあるんだと思いますよ」

サイゴウ
「この映画は、かの有名な『春香伝』を下敷きにしている訳だが、その原作自体に色んなバージョンがあって、艶話系のバリエーションあるらしいから、今回の【エロ系】な映画化も決して横道に逸れていないんじゃないのかな。それよりも今までの純愛・忠節路線じゃなくて、【男の視線、男の想い】をテーマにして物語を再構築したところは注目すべきだろう。こういう古典って、既に固まっちゃっているから大胆な解釈で作り直すには、非常に難しいものがあるんだけど、アレンジは大胆でも原作から決して離れていなかったんじゃないか。そこら辺にキム・デウの正攻法的骨太な作劇術の良さがよく出ていたと思うけど、全体的に【虚しさ】を描こうとするあまり、演出が制御されすぎて元気が無くて映画のリズムがとにかくフラットになっちゃってもいる。話自体は怒涛の展開なんだけど観ていて眠くて仕方なかったのも事実。デビュー作『淫乱書生』が一般性重視の演出だったことに比べて、今回は作家性が非常に濃かったな。まあ、従来のマンネリ時代劇を避けたかったのかもしれないけど。セックスシーンのしつこさが目新しくはあったけど、これは演出側のビジネス向け方便だったのかも」

サカモト
「登場人物に、とにかく元気がないのが良くも悪くも印象的ですよね。キム・ジュヒョク演じる房子が、いつも視線を伏せてボソボソしゃべっていることもありますけど、みんなコソコソしている感じで、それがまた映画を【どよーん】と暗く平坦にしています。ちょっとばかし、昔の日本映画みたいでしたね」

サイゴウ
「でも画面作りは非常に丁寧で凝っている。時々照明に難ありのシーンもあるけれど、全体が統制されてディテールも細やかだ。韓国の時代劇が安っぽかったのは、ホント、一昔という感じだな。それにこういう題材って、お約束的な奴生や両班の派手な部分にスポットがどうしてもいっちゃうんだけど、もっと人間臭い彼らの姿の方を描こうとしていたから、そこら辺も面白かったと思う」

サカモト
「映画のタイトロールにもなっている房子演じたキム・ジュヒョクが、かなりよかったですよね、新境地って感じで。彼って現代的な役が多いのでこういう役は新鮮だったし、主人公の複雑な心境をよく体現していたと思います。髭も似合っていたし」

サイゴウ
「彼って顔が長いから、表情が間延びして見えちゃうんだけど、髭がそれをうまくカバーしていたな。重度の慢性疲労症みたいな役なんだけど、内に秘めた攻撃性も持っていて、キム・ジュヒョクの演技はその二重性を内面の部分でよく表現していたと思う。目つきが異常だったんだけど、あれってメイクかな?」

サカモト
「ひどい寝起き顔みたいな奇妙な二重瞼でしたからねぇ。対する夢龍演じるリュ・スンボムもかなりいいです。この手の古典劇に出演していたこと自体も目新しかった訳ですが、元々リュ・スンボムって内省的で神経質な俳優だと思うんですよ。でも準アイドル、個性的な三枚目としてのイメージがデビュー当時の段階で固まっちゃったこともあって、そうじゃない役がなかなか廻ってこないんじゃないでしょうか。そこら辺の資質を見抜いて夢龍役に起用できたことも、この作品が成功した要因でしょうね。夢龍って、お坊ちゃんだけど狡猾だし、横暴で身勝手。それをギャグとして流さないで好演しています。予想外の適役でした」

サイゴウ
「オ・ダルスも、いつものギャグ連発役じゃなくて落ち着いた役だったのもいい。コン・ヒョンジンもお約束のドタバタキャラじゃなくて理知的な役、これって素の彼を垣間見るようだったな」

サカモト
「女優陣は華が無くてパッとしないんですが、要求される役がアレなんでオファーできる女優はだいぶ限定されたんでしょうね。でも春香演じたチョ・ヨジョンはよくやったと思います。相変わらず演技は巧くないんですが『吸血刑事ナ・ヨドル』の頃に比べれば随分、成長したんじゃないかと。それに地味なルックスなので、かえって親しみが持てましたし」

サイゴウ
「春香の役を他の著名女優が仮に演じたとすれば、その女優の裸ばかりに世間の目が集まること必至だから、監督としてはそうなることは避けたかったんじゃないの?『霜花店』みたいにね」

サカモト
「映画の最後はちょっと衝撃的なドンデン返しになっていて、決してハッピーエンドとはいえないんですが、房子の深い愛が伝わってくる感動的なラストになっています。映画全体は正直かなり退屈なんですが、あのラストがあったからこそ、全体の印象が冴えた作品になったのかもしれませんね」

サイゴウ
「【古典を今に活かす】という意味で良い手本になりうる作品だろうな。この映画を観る前に原作や他の映画版、例えばイム・グォンテク版なんかを観ておくと、もっと発見があるんじゃないかな?」

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